多施設共同による痛みのケア改善プログラム

このプログラムは、エビデンスに基づく新生児の痛みのケア実践を医療現場によりスピーディーに浸透させるために、個々のNICUだけでなく、複数のNICUから医療職者チームが集まり、定めた期間においてそれぞれのNICUの痛みのケアの現状や課題、取り組みなどを定期的に共有することを通して互いが学習し、それぞれの施設の痛みのケアの実践に生かすプログラムです。
これまでに2014年∼2016年1)と2017年∼2019年2)に開催され、参加したNICUでは改善期間(1年間)に確実なケアの質改善が見られました。

参加者の感想

下記はプログラム最終報告会(@第29回日本新生児看護学会学術集会)での参加者(NICU看護師および医師)の感想です。

  • 改善を実感し継続したい
  • まだここまでできていないと思うことが多かったが、最初を振り返るとこんなにできるようになったと思うことが多くあった。そこをスタッフにフィードバックしつつ頑張っていきたいと思いました。
  • 今後も痛みケアについてよりよいものにしていくようにスタッフ一同で頑張りたい。
  • 参加させて頂き、ここまで取り組むことができました。今後も継続して取り組みたいと思います。
  • 自施設を分析できた
  • 自施設の組織分析ができて良かったです。
  • ITシステムを利用して四半期ごとに実施率を出すことでケア改善に役立ったと思います。
  • やはりフィードバックと維持が課題と思いました。今後もがんばっていきます。
  • 他施設の情報を得る
  • 施設間の意見交換ができて良かったです。
  • 今までに参加した施設の情報もあったらおもしろいと思います。
  • 多職種協働による改善
  • 医師と看護師の両者がメンバーになることで両者で協働してすすめることができてよかったです。

共通して得られた改善内容

  • 全体として1 年間で複数の質実施率の上昇や高い実施率の維持が見られました。
  • 参加施設の看護師と医師のリーダーは、自施設の痛みのケアの課題に対し改善を積み重ね、1年間で実際にスタッフへの痛みの教育や記録書式の整備、痛みの測定ツールの導入などの改善を成し遂げました。
  • 1年間という限定した期間で改善した背景としては、医師と看護師それぞれの職種のリーダーが存在すること、看護師・医師双方の病棟管理者による支援があったこと、質指標による改善の可視化(自施設と他施設)が原動力となったことが考えられました。

プログラムの内容

  • Ⅰ. 自施設の現状および課題の把握(事前調査)約3ヶ月
  • 組織分析シートの作成
  • 生後48時間の痛みの回数
  • 質実施率
  • Ⅱ. ワークショップ(1日間)
  • 看護師・医師のリーダーが参加
  • 病棟での教育方法
  • 参加施設間での事前調査の共有および情報交換
  • 自施設の改善計画の検討
  • Ⅲ. 改善活動(1年間)PDSAサイクルを回す
  • 3ヶ月毎の質実施率の算出
  • 3ヶ月毎の改善計画の見直し
  • 中間報告会(ワークショップ半年後)
  • Ⅳ. 最終報告会(ワークショップ1年後)

新生児の痛みのケア改善のためのデータベース

自施設と他施設の痛みのケアの質の状況を共有するために、参加するNICUは痛みのケアの質実施率が自動で算出できるITシステムを利用します。(ログイン画面)

写真:ログイン画面キャプチャ

自施設と他施設の痛みのケアの質の状況を共有するために、参加するNICUは痛みのケアの質実施率が自動で算出できるITシステムを利用します。(ログイン後の画面)

写真:データ

新生児の痛みのケア改善のためのデータベースでは質実施率の変化がグラフで自動表示されます。(下記は例)

実施率の推移グラフ

文献

  • Ozawa M, Yokoo K, Funaba Y, Fukushima S, Fukuhara R, Uchida M, Aiba S, Doi M, Nishimura A, Hayakawa M, Nishimura Y, Oohira M. A Quality Improvement Collaborative Program for Neonatal Pain Management in Japan. Advanced in Neonatal Care 17(3): 184-191, 2017. Jan 20. doi: 10.1097/ANC.0000000000000382.
  • 小澤未緒, 古田惠香, 本村勅子, 廣瀬孝子, 清水聡美. 参加回数の比較によるNICUにおける多施設共同痛みのケア質改善活動の効果. 日本看護管理学会誌24(1):52-62, 2020. https://doi.org/10.19012/janap.24.1_52